ぼくのずるやすみ 26

ほんとはずるやすみじゃないよ!

ともだちサービス 【感情利用量上限ありプラン 会員ランク制あり】

富士山ってひとりでのぼってもいいんですか?

誰かと深く関わるとき、つらい、と感じることが多い。
僕は、深くかかわった人とは大抵ぶつかってしまって、それっきりになっちゃいます。
だから、僕には友達があまりいません。大体の場合、ともだちサービスの感情利用量上限を超えた利用が原因で契約解除になることが多いような気がします。

ともだちサービス【通常プラン】について

この社会で生きているひとは、「ともだちサービス」を提供しています。
関わる相手それぞれに決まった感情利用量の上限を設定していて、その範囲内で、共感したり、同情したり、心配したり、怒ったり、悲しんだりしてくれます。

感情以外にも、時間利用もサービスに組み込まれていて、暇な時間を一緒につぶしてくれたり、たいして面白くなくても話を聞いてくれたりします。

会員ランク制度

会員にはランクがあり、親友、恋人など、いくつかの区分があります。
そして、この区分に応じて利用できる感情や時間の上限が変動します。

契約条件

この契約の条件の一つは、相互契約を結ぶことです。
だから、誰かとこの契約をする場合、自分もその相手に同様のサービスを提供しなければなりません。

注意事項

この契約には、書面のやり取りがないので、サービス提供者に期待できる感情利用量の上限が利用者にはわかりません。そのため、少しずつ調整しながら利用することが推奨されています。多くひとは、おそらく自身が他者に提供しているサービスの内容をもとに、相手にも同様のサービスを期待しています。そして、その期待内容に大きな差がないため、全体的にスムーズに機能しています。

もちろん、このような曖昧さを前提とするサービスなので、トラブルも絶えません。
利用上限を超えた感情利用や、会員区分に関する誤解が原因のトラブルなどが、日々、報告されています。

このよう事態が発生した場合、それがきっかけに契約内容が明示的に見直され、よりスムーズなサービス提供が行われるケースもありますが、契約解除となるケースも多いのが現状です。

ですが、心配ありません。
なぜなら、仮にある相手との間の契約に問題が発生し、契約解除となってしまったとしても、ほかにいくらでも同様のサービスを提供している人がいるからです。

トラブル事例:ボクくんのケース

例にもれず、僕もこのサービスを提供していますが、どうやら僕が提供するサービスの内容は周りの多くの人とは異なっていることが、最近わかってきました。

最大の違いは、僕の提供するプランが「感情利用量上限なしプラン」であるというところです。僕の場合、契約している顧客が他の人よりも少ないので、提供できる感情が豊富にあり、それがこのプランを実現しています。

ただ、自分がこんなサービスを提供しているばかりに、周りの人にも同じようなプランを期待してしまいます。そして、相手が提供するサービスの上限を超えて相手の感情を利用しようとしてしまい、規約違反で契約解除されてしまうのです。

それがわかっているんですが、どうにもそこが割り切れなくて、毎回同じことの繰り返しになります。

好きだけどキライな「やさしいひと」

ひとってだいたい、やさしいことがほとんどです。言い換えれば、「同情」とか「心配」という感情を誰に対しても向けてくれる用意ができている人がほとんどで。だから、弱音を吐いたり、苦しさを吐露すると、やさしくしてくれる人が多いです。

でも同時に、僕から見ると意外に、他人に関心がないひとがほとんどです。そういう感情利用上限は、僕にとっては意外に低く設定されています。だから、最後には「めんどうくさい」と思われて終わります。

やさしくてつめたいのが他人だと、僕は思っています。
わかっているけどそれがなかなか呑み込めなくて、「最終的に面倒になるなら、初めから関わらないでくれ」と思ってしまうことも多いです。
でも、中途半端なやさしさでも、やさしさはやさしさだということもわかります。貰ったものに対しては、ありがとうと思います。

ただ、トータルで見ると「つらい」という気持ちの方が大きい気がしています。
だからなるべく、他人と深くかかわらないようにしようとは思っています。
だけど、ひとりでいるのは、やっぱりけっこうさびしいので、やさしいひとと出会って、その人との付き合いが長くなってくると、それを忘れてしまいます。そして同じことを繰り返して、つらい気持ちになって終わります。

僕は、やさしいひとが好きですが、同じくらいキライです。