ぼくのずるやすみ 26

ほんとはずるやすみじゃないよ!

ボクのこと 学生時代

秋田でぷかぷか、大学生のボクくん

ボクくんは、冬のある日、関東地方の郊外、とある町で生まれました。
高校生までを関東で過ごしたボクくんですが、大学生のボクくんは、秋田県に居ました。ボクくんは、国際教養大学という小さな県立大学の学生だったからです。

この大学は、ボクくんが学生だった当時はほかの大学と比べると、ちょっと変わった学校でした。地方都市の中でも決して目立つ方ではない秋田という場所にありながら、授業がすべて英語で行われたり、1年間の交換留学が義務付けられていたりと、なんだかエキゾチックな環境だったようです。また、就職率100% を大きな魅力として打ち出すような、実践的な教育機関を目指した学校だったみたいです。

ボクくんは、いろんな意味で「場違いな学生」でした。なぜなら、英語が得意ではなかったし、純粋な学問の場としての大学にあこがれていたからです。

そのうえ、大学生のボクくんは、がんばり方を間違えました。苦手な英語を伸ばしたり、「大学ってどんな場所?」というナゾにシロでもクロでもない答えを探したりしないで、得意なことをがんばったんです。ボクくんは、日本語で本をいっぱい読みました。

東京でびくびく、大学院生のボクくん

そんなボクくんだったので、秋田の学校を卒業したあとは、大学院に行ってみることにしました。願書の準備で頭がいっぱいで試験日をすっかり忘れてたボクくんは、願書締め切りの翌週には、もう試験があることを知って慌てたりしました。それでも、一橋大学大学院の社会学研究科というところに受け入れてもらえてホッとしました。

大学院と大学の違いがよくわかっていなかったボクくんは、眉間のしわが消えなくなるんじゃないかといつも心配していました。実際、頭を抱えるのが癖になって、今でも、何もないのに頭を抱えちゃうことがあるみたいです。「勉強すること」と「勉強するくらい大事だけどまだ他の人が知らないことを見つけること」は全然違うんだなぁ、とボクくんは気づきました。

大学院にいた頃のボクくんはよく、「大学院 きつい」とブラウザで検索していました。「そうだね」と誰かに言ってほしかったのかもしれません。そして、ある知恵袋のやりとりを見つけました。そこでは、ボクくんと同じような弱音に対して、どこかの誰かが「大学院生は社会人です。そんなこと言ってる暇があったら研究してください」とピシャリ。ボクくんは頭を抱えるよりも先に、おそるおそる、じぶんのクビを確認しました。どうやらまだクビはつながっていたみたいです。あの時の剣豪は何という流派の方なのでしょう。

とびだせボクくん!まってろ社会!

見通しがついてからはスムーズに研究は進んだようで、なんだかんだ、ボクくんは2年間で修士課程を修了することができました。だけど、ボクくんは学位と一緒に「批判的に考えるクセ」も  6 年間の学生生活のなかでこっそり拾っていたみたいです。がんこで妥協ができないボクくんの性格とこのクセは、とっても相性が悪いんだ。そのことにボクくんは気づきますが、それはまだ先のことでした。(つづく)

整いました!

そうだ、マッサージ、行こう

ここ最近、なんだか疲れもたまっている感じがしていて、マッサージとか行きたいなってずっと悩んでたんです。ただ、なかなか費用も高いし、手を出せずにいたんですね。

そんな僕なんですが、先日、健康診断に行きまして。そこで、心電図ってあるじゃないですか。その時に看護師さんに体にシールみたいなのを貼ってもらうんですけど、それがなんか気持ちよかったんですよね。そのときに、僕はマッサージに行こうって決意しました。

健康診断が終わってすぐブラウザ起動して、近くのマッサージ店を調べて、予約して、その日のうちに行ったんです。

別に、がっかりとか、してないっす

お店について、渡された服に着替えて待ってたら、施術士の人がやってきたんです。男の人だったんですけど、もちろん、がっかりとかはしてませんよ。ごく普通のマッサージ店なので。

いろいろ見てもらったところ、どうやら肩から首まわりに疲れがたまっているようで、ここを中心にやっていこう、ということになったんです。
横になって、施術が始まるんです。施術中、担当者の方がわりと積極的に話しかけてくれたんですけど、正直今まで経験したことがないくらいめちゃくちゃに痛くて。歯を食いしばりながら必死に受け答えしてました。内緒ですよ。

チェンジ

「じゃあ、ここからは担当が変わります」
痛みに耐えながら施術を受けてたら、突然そう言われたんです。
なんか、骨盤調整と筋肉調整で担当者が違うというシステムみたいで、途中で担当者が交代したんですね。僕はうつ伏せで横になっていたので、僕の見えないところで別の人と交代した、という感じでした。

特に意味はないですけど、僕、お店を予約する前にそのお店にどんな方が働いているのかを調べてたんです。だから、特に意味はないですけど、男性のスタッフが2人、女性のスタッフが2人、という構成ということは把握してたんです。もちろん、特に意味はないですけど、女性のうち1人はベテランっぽい感じの髪の短い方で、もう1人はけっこう若そうな感じの髪の長い方だということもわかってたんです。で、特に意味はないですけど、「1/4 か...」とか思ったりもしました。

お店に入った時点で、その日は男の人と、髪の短い女性のスタッフさんしかいないことはわかってたんです。だから、担当が変わったときも「あの髪の短い女性だな」って感じでした。

整体師になりたい

交代してからは、僕はずっと無言だったんですが、少ししたら、新しいお客さんがお店に入ってきたんです。そのお客さんは、聞いている限り結構若い女性のお客さんみたいな感じでした。

ちょっとしたら、そのお客さんが「今日これから、朝までずっと立ちっぱなしなので、先に疲れ取っちゃおうと思って」とか言ってるのが聞こえて、「そんな ZOZO TOWN の支払いみたいなことできるか!」と思ったりもしたんですけど、しばらく、そのお客さんと男性の施術士さんの話に聴き耳を立ててたんです。

いろいろ話してて、すごく気になったことが一個あって。話の中で、施術士さんがお客さんの身体に触るときに必ず「触りますね」って確認してたんです。僕の時はその確認なかったなぁ、っていうのも気になったんですけど、それに対して女性のお客さんが毎回「ありがとうございます」って返してて。男が「触りますね」って言って、女の人が「ありがとうございます」って答えるこのやり取り、なんかすげぇなって思ったんですよ。特に意味はないですが、整体の資格取ろうかなとも考えました、さすがに。

整いました!

僕、正直、ずっと聴き耳を立てることだけに集中していて、自分のマッサージのことを忘れてたんです。だから、施術が終わって、起き上がるように言われたときにびっくりしちゃってあわてて体を起こしたんです。それでその時、初めて施術してくれていた方の顔をちゃんと見たんですよ。そしたら、ベテランの方ではなく、お若い女性の方で。「聞いてたのと違う~!!!」って言いそうになっちゃいました。

なんか施術終わったあとでその女性の方がいろいろ説明してくれるんですけど、こっちはもう、喪失感で頭がいっぱいで、何も入ってこないんですよね。

で、最後に、その人が言ったんです。
「最後の調整するので、触りますね」って。

だから僕、はっきり言いました。
「ありがとうございます」って。

マッサージって、いいですねぇ~。

ぱんつの広告

「優秀な営業は…」とか言うひとってさ…

このまえ、知り合いのおじさんに営業というお仕事について話を聞いたんです。
営業と言えば、よく言うじゃないですか。
「優秀な営業は価値のないものでも売ることができる」みたいなこと。僕、そういうの聞くとうんざりするんですよね。

もちろん、ほんとはいらないものを売られるお客さんに悪い気がする、というのもあるんですよ。ただそれ以上に、売れなかったとき、「売れない理由」がほんとは商品にあるのかもしれないのに、営業担当のせいで売れないことにされちゃう気がして。あと、大体そういうこと言うのって、自分は得る立場にある人じゃないことが多い気がするし。だから、嫌いなんです。

癒し?卑し?

だから、そのひとと話したあと、僕はちょっとだけ気分が下がってたんです。
こんな時、最近の僕はブラウザを起動するんです。目の保養っていうんでしょうか。なんか、最近僕のブラウザ、女の人向けの下着とか、水着とかの広告がすごい頻度で表示されるんです。

前に一度表示されたとき、「かわいいな」、いや「なんかえっちだな」ってちょっと思って軽い気持ちでタップしたんです。そうしたら、こんなことになりました。

最近も、たまに広告をタップして、目の保養をしてるんです。

Googleさん、僕、おとこですよ

でも、僕はいいんですけど、広告の出し方としては間違ってると思うんですよね。だって、僕、Googleアカウントでログインした状態のブラウザでページを見てるし、僕が男だってことは、わかるはずなんですもん。

彼女へのプレゼント、とかなのかもしれないですけどね。実際、恋人に下着をプレゼントするのってどのくらい一般的なんでしょうか。むかし女の子に「どの下着がいいと思う?」みたいなことを下着売り場とかで聞かれたことありましたけど、答えにくかった記憶があります。

やっぱ優秀な営業ってさ

とにかく、目の保養のためにブラウザを起動するたびに、いまいちな広告戦略だよなぁと思っているんです。まぁ、そんなこと言いながら、この間ついに勢いでひとつ買っちゃったんですけどね。下着。
ちなみに、いまは恋人はいませんよ。

そのとき、僕は思ったんですよ。
「優秀な営業は価値がないものでも、売ることができるんだ」って。

ほんと何やってんですかね、僕。

あらすじ

ボクくんは困っていました

ちょっと長めの学生生活を終えて、社会に出たボクくんは困っていました。
どうやら、なかなか社会という場所になじめなかったようです。
大学生の頃は社会学を専攻していたのに社会になじめないなんて、ボクくんにとっては思いがけないことでした。

ボクくんはいま 26 歳ですが、すでに会社は 3 社目です。今の会社にいる40歳の課長よりも転職回数が多くて、ボクくんはびっくりしていました。しかも、今の会社にもなじめませんでした。だから、ボクくんは、会社をしばらくお休みすることに決めました。こうしてはじまったのが、「ぼくのずるやすみ」ということのようです。

ほんとは「ずるやすみ」じゃないからね!

「ずるやすみ」なんて言っていますが、ボクくんはお医者さんに診断書をもらっているので、ほんとうは「ずるやすみ」というわけではありません。でも、いつも元気がないわけじゃないので、というか会社にいるとき以外は基本的には元気なので、「ずるやすみ」と思ってしまうこともあるようです。

ボクくんは、「ずるやすみしたらいけないんだぞ!」と誰かに言われても、「環境との関係性で発生する適応の問題なので、ずるじゃないです~、差別ですか?あ、もしかして羨ましいんですか?ほんとはあなたもおやすみしたいんですか?」と言ってやろうと思っていますが、ちょっと気になっていることもあります。
それは、心が不調で会社をおやすみする人が「ずるやすみ」だと思われてしまうことです。もうおやすみしているひとが「ずるやすみだ!」と言われてしまうのもつらいことですが、それと同じくらい心配なのは、そんな風に言っているひとが、ほんとはつらいのにおやすみしにくくなることです。

身の回りに誰かおやすみするようなひとがいるような環境はきっと、おやすみしたくなるような嫌な環境なのかもしれないと思うし、おやすみしているひとに「ずるやすみだ!」と悪口を言いたくなるひとはもしかしたら、そのひともすごく苦しいけど、それでもがんばっているから、やすんでしまうひとにチクチクしてしまうのかな、なんて思います。
そんなひとが、そのひと自身の言葉のせいで、自分の心と体が求めていることにフタをして、がんばりすぎていろんなものを失ってしまわないかが心配です。

どんなおやすみになるのかなぁ

こうしてはじまったボクくんの「ずるやすみ」。
いったい、どんなできごとが待ち受けているのでしょうか。